「金利」がわかれば経済がわかる!「お金」を学ぶならまずは「金利」から

「金利」は、テレビのニュースなどでよく聞きますし、私たちの生活にも密接に関わっています。
しかし実はこの「金利」について、よくわかっていないという人も多いと思います。
今回はそんな学校では教わらないお金の仕組み、「金利」についてお話したいと思います。「金利」を理解せずに「お金」や「経済」を理解するのは不可能だと言われるくらい、大切なお金の仕組みです。
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ー目次ー

・「金利」ってどんな仕組み?
・日本と米国の金利政策

「金利」ってどんな仕組み?

銀行はどうやって儲けるの?

まずは銀行の仕事について少し見ていきましょう。
銀行の仕事は、「お金が余っているところ」から「お金が足りないところ」へ融通する事です。
そのため銀行のことを「金融」業と呼びます。
「余っているお金」、つまりみなさんが銀行に「預けているお金」を「お金を必要としている人」に貸し出す、これが金融の仕事で、銀行の本業です。

「お金を貸し出す」ということにはもちろんリスクがあります。もし貸したお金が返ってこなかった場合、銀行の「損失」となってしまうからです。
そのため銀行は、そのリスクの分だけ「お金を借りた人」から金利を受け取ります。そしてその一部を預金者に渡します。その差額が銀行の儲けとなります。

私たちが銀行に預金していることでもらえる利子は低く、ローンを組んだ場合に払う利子の方が高くなっているのには、このような銀行が利益を出すための仕組みによるものです。

金利ってなに?

「金利」とは、経済の仕組みがすべて込められていると言われているほど重要な仕組みです。
経済を理解するためには、必ず「金利」について理解する必要があります。

まず、銀行に預けるお金の場合、引き出すまでの期間が長く、引き出すための条件が厳しいほど金利は高くなります。また、好景気にはみんながお金を借りようとするので、金利は高くなります。

現在は金利が自由化されていますが、以前は日銀が金利を決めていました。
日銀が「金利は〇%にしよう」と決めていた金利は、「公定歩合」と呼ばれていました。この「公定歩合」を上げたり下げたりすることで、日銀は景気対策を行っていました。そして民間銀行の金利は、この「公定歩合」に連動するように規制されていました。
しかし、銀行同士も競争意識を持つべきだという考えをもとに、1994年10月に「金融自由化」によって、金利はそれぞれの銀行が自由に決めるという事になりました。

「金利」ってどうやって決まるの?

金利には短期間での貸し借りにつく「短期金利」と長期間での貸し借りにつく「長期金利」があります
一般的に、一年未満のものを「短期」、一年以上のものを「長期」と呼びます。

◆短期金利

金融機関同士は頻繁にお金の貸し借りをしていて、その取引が行われる市場を「コール市場」と呼びます。
このコール市場で付く金利が、最も代表的な「短期金利」です。
そしてこの短期金利が、世の中のあらゆる金利を決める際の基本となります。
例えば住宅ローンや自動車ローンは、この短期金利にいくらか上乗せさせたものです。
金融機関同士で貸し借りをするよりも、他の企業や一般の人に貸す方がリスクが上がるため、住宅ローンや自動車ローンの金利は、コール市場の金利よりも高くなります。

このコール市場での短期金利は日銀によってコントロールすることができます
なぜなら、短期金利は基本的に市場に流通するお金の総量の増減でコントロールできるからです。つまりこの短期金利が現在における「政策金利」になっています。

具体的には国が銀行の持っている国債を買い上げたり、各銀行に国債を売ったりすることで、金利の調整をしています。
金利も、モノの値段が需要と供給によって上がり下がりするのと同じ仕組みを持っています。
景気が良くなってみんながお金が必要な時に、「流通しているお金」が少なければ、金利は高くなります。みんなが必要ないときに世の中にお金がたくさんあれば金利は低くなります。
日銀はこの仕組みを利用して、国債を買ったり売ったりして、「世の中のお金の量」を調整しています。それによって、金利と景気をコントロールすることができます。

◆長期金利

長期金利の付く最も代表的な金融商品は「10年物国債」です。
この長期金利は発行済の国債の売買状況によって決まります。つまり、日銀ではなく「市場」が金利を決めています

国債には「額面(元本がいくらかを表す金額)」が決まっていて、額面に応じて「固定利付債」という利子が付きます。債券市場で取引されている国債は毎日値段が変わりますが、支払われる「利子」は変わらないので、国債の価値が上がった場合利率は下がることになります。
国債の利率は長期金利を表す目安として使われますので、国債の価格が上がると、長期金利は下がるということになります。
発行済国債の価格が上昇すると金利が下がり、発行済国債の価格が下がると金利が上がるというのが、「市場」によって決まる長期金利の仕組みです。

ひどい財政赤字になったり、政情不安や天災などによって国債の格付けが下がった場合、国債の価格が下がり金利が上がります。
つまり、「国の信頼が落ちる」という悪い状況になると金利が上がるというわけです。

先ほどの短期金利の時の「景気が良くなると金利が上がる」と言う話と違うことのように感じるかもしれませんが、このように、金利が上がるという現象には、「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」があります
何が金利上昇の本当の原因なのかは、色々な見方ができるということが言えます。

また、「質への逃避」と呼ばれる、株価に対しての不安から、リスクの低い国債に投資が集中することがあります。すると国債価格は上がり、金利は下がります。このように、株価が暴落したりすると、金利が急激に下がることがあります。
逆に株価が上がると国債を売って株を購入する人が増えるので、長期金利は上昇する傾向になります。

このように、長期金利というのは絶えず相場に左右されてしまうので、コントロールが困難だということがわかります。

日本と米国の金利政策

リーマン・ショック時の米国の「金融緩和」

2008年9月、アメリカの巨大投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻しました。
これを受けて、世界的な金融危機に突入し「リーマン・ショック」が起きました。
一つでも銀行がつぶれると銀行の間で不安が広がり、金融機関同士でのお金の貸し借りが鈍くなり、一気に不況に突入してしまいます。

実は民間の銀行には手持ちの現金がそれほど多くは置かれていません。銀行はそれぞれお金を貸しだす先を探して、預金の効率的な運用をする必要があるからです。
そのため、金融機関は「コール市場」を利用して金融機関同士でお金の貸し借りを行います。このお金の貸し借りは「無担保」で行われます。無担保な分、不安が広がる状況の中では、高い金利でお金を貸すということが増えていきます。すると、必要な分だけのお金が届かなくなり、このことが世界的不況の引き金になってしまいます。

こうした状況の時に各国政府が取る政策が「金融緩和」と呼ばれる、お金が流れやすくなるように、市場にたくさんのお金を流通させる政策です。
金融緩和では、コール市場にお金があり余る状態を作って、銀行が他にお金をどんどん貸すという方向に持っていこうとします。
リーマン・ショックの時では、アメリカの中央銀行であるFRBが、一般の銀行が持っている発行済の国債を買い上げ、銀行にドルがあり余る状況を作ろうとしました。
2008年9月に2.0%だった政策金利は、12月には0.25%と大幅に引き下げられました。この金融緩和政策は2014年10月まで続き、その後経済は安定していきました。

このような「金融緩和」からも、金利が需要と供給のバランスで決まるという事がわかります。
「借りたい人」がたくさんいて、「貸したい人」が少なければ金利は上がりますし、逆なら下がるということになります。

「ゼロ金利政策」ってどんな政策?

「ゼロ金利政策」とは、中央銀行(日銀)が各金融機関にお金を貸す際の金利を、限りなくゼロに近づけるという政策です。日本の場合、金融機関は日銀からお金を借りて事業を行っていますが、その際の利子がほぼゼロになる、ということです。

この景気対策は、経済状況の悪化が深刻になったときに発動されます。ゼロ金利にすることで、市場に流通するお金の量を増やし、経済の流れを活発にするというねらいがあります。
日銀がお金を貸すときの金利を(ほぼ)ゼロにすると、民間の銀行はより多くのお金を借りることができます。タダ同然で日銀から借りたお金なので、一般の人たちに貸す時も、非常に低い金利で貸すことができるようになります。
結果として社会全体にお金が流通し、景気の上向きが期待できる、という仕組みです。
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日本ではバブル崩壊後にこの「ゼロ金利政策」が取られ、その後ITバブルを機に解除され、ITバブル崩壊後に再び事実上復活します。しかしその後景気が回復してまた解除され、2008年の金融危機により、再び導入されます。
その後2016年にマイナス金利政策となり、今も続いています。

アメリカの中央銀行であるFRBも、2008年の金融危機で「ゼロ金利政策」を導入しています。現在も、コロナによる不況を下支えするために、2020年3月から「ゼロ金利政策」を続けています。

日本の「マイナス金利政策」

日本は2016年1月から、「マイナス金利政策」を始めました。日銀が物価上昇率2%を目指して導入した日本史上初めての試みです。
銀行や信用金庫、信用組合は、日銀に当座預金口座を持っています。銀行同士の取引きがあるときは、その当座預金口座を使って取引がされます。その日銀に預けてある民間銀行の預金の金利を、マイナスにするというのが「マイナス金利政策」です。

本来民間の銀行は、日銀に預金することによって金利から利益を出す事ができます。そのため不況時になると、下手な融資をして不良債権を作るよりは、日銀に預けたままにして金利から利益を出した方がいいという考えの銀行が出てきます。すると、ますますお金が動かなくなり、経済が活性化されないという状況になります。
そこで日銀は、当座預金に必要な金額以上を預けている銀行からは、手数料を取るという仕組みを取ることにしました。金融機関からすれば、お金を預けたままにしてしまうと、どんどん預金が減ってしまうという状況になるので、「マイナス金利」と呼ばれています。

「マイナス金利」を導入すれば、お金が世の中に出回り、景気が良くなるだろうと思われていましたが、実際にはそうはなりませんでした。
なぜなら、民間の金融機関は日銀から引き出したお金を企業に融資するのではなく、国債を買うことに使ったからです。
なぜこの状況で民間の金融機関が積極的に国債を買うかというと、世の中に流通しているお金を増やして景気をよくするために、民間の銀行が持っている国債を日銀が高く買い上げてくれるからです。政府が発行した国債を民間銀行が買い、それを日銀が買い集める。その結果日銀は利益が減り、政府への納入金が減ります。

このような悪循環が続いたまま、現在も日銀の「マイナス金利政策」は続いているというのが現状です。


以上が「金利」に関する基礎知識です。
「金利」を理解すると、普段聞き流していたニュースも今までとは違った理解ができるようになります。
他にもお金や投資、金融教育に関する記事がありますので、是非読んでみてください。
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投稿者: Hiroko mama

カリフォルニアで夫と3人の息子と暮らしています。 早期リタイアのために米国株式投資で資産形成を始めました。 金融リテラシーを高めるために日々勉強中です。

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