子どもに社会の在り方をどう教える? ユダヤ人の「牛とロバ」のお話

今回は、子供に社会の在り方を教えることができるユダヤ人の「牛とロバ」のお話を紹介したいと思います。
また、年齢が高くなってきたお子様に「社会的弱者」とは一体どういう状況に置かれている人達なのか、ということをわかりやすく実感させることができる簡単なゲームも紹介しているので、是非最後まで読んでみてください。

ー目次ー

・ユダヤ人の「牛とロバ」のお話
・子供たちに必要な「社会的公正教育」

ユダヤ人の「牛とロバ」のお話

タルムードでわかるユダヤ人の哲学

ユダヤ人は、優秀で成功者の多い民族として知られています。
金融業界、証券業界、ハリウッド業界、IT業界など、世界でも有名な企業の創立者はその半分以上がユダヤ人だと言われています。

彼らは子供のころから日常的に議論を繰り返し、思考力を高めるためのトレーニングを行っています。
逆に言えば、私たちも日頃から議論をすることで、思考力を高めることができます。日常で起こる様々な出来事に対して「なぜ?」と疑問を持ち、議論する癖をつけていくことが重要です。
特に子供の頭の中は、「なぜ?」でいっぱいです。
何度も「なぜ?なぜ?」と聞かれると面倒になる気持ちもわかりますが、子供の思考力を高めるためにも、子供の「なぜ?」の疑問にはとことん付き合ってあげましょう。

ユダヤ人は議論する際に「タルムード」を活用しています。タルムードとは、1冊400ページ、合計30冊におよぶ議論集です。タルムードの中には、生きていくためや、成功するために必要な哲学もたくさん含まれています。
「あれもこれも」では成功できない!ユダヤ人に伝わるナポレオンとニシンのお話
【ユダヤの逸話】子供の頭を柔軟にする「ふたりの泥棒」のお話
ユダヤ人から学ぶ思考力の育て方「ライオンのミルク」のお話
ユダヤ人の子供が「魔法のザクロ」から学ぶ「成功の法則」
ユダヤ人が成功する秘密 ユダヤ人の母親が子供にしていること

「牛とロバ」のお話

今回は、その中から「牛とロバ」のお話を紹介します。

トーラの教えにはこうある。

「牛とロバとを同時に一つのくびきにかけ、鋤(すき)を引かせてはならない」

これはなぜか?理由を答えよ。

「ユダヤ式 Why思考法」より抜粋

なぜ牛とロバを同時にひとつのくびきで鋤を引かせてはいけないのか、理由を子供と一緒に考えてみてください。

子どもが自分の意見を答えたら、どんどん突っ込んだ質問をしていきましょう。
「牛とロバではなく、老牛と若牛だったら?」
「足が長い牛と短い牛だったら?」
「目の見えないロバと耳の聞こえないロバだったら?」

ユダヤ人の母親はもっとすごい質問をしていきます。

「それじゃあ、牛と金魚は一緒のくびきにかけてもいいのかな?いけないのかな?」

ここで「え?金魚は空中では生きられないじゃないか」で、議論を終わらせてはいけません。
もし「一緒のくびきにかけてはいけない」と思うのであれば、その理由をこのような突拍子もない質問でもきちんと考えさせてみせてください。

ここで大切なのは、このお話に登場する「牛」や「ロバ」は一体何を表しているのかということです。

金魚を持ち出してまで、この質問は一体何を考えさせようとしているのか、ということを子供に考えさせることが重要です。

「ロバ」という弱者

牛とロバなど、力が均等でないもの同士を一つのくびきにかけると、うまく畑を耕すことができません。一緒に進ませようとしても足並みが合わず、それどころか二匹とも疲れてしまうからです。特に小さくて力の弱い方に無理がかかり、苦痛を与えることになります。
牛とロバの場合、一つのくびきにかけると、力の弱いロバが力の強い牛に引きずられて苦痛を感じます。
「一つのくびきにかけてはいけない」という教えには、ユダヤ人の「弱者保護」の考え方が含まれています。

社会には力の強い者がいれば弱い者もいて、歩くのが早い人もいれば遅い人もいます。能力や体力に差がある人たちが共存する社会では、弱者にしわ寄せが及ばないように、弱者に合わせなければならないというのが、「弱者保護」の考え方です。

ロバの場合は、強者である牛に引っ張られて苦痛を感じることになります。では金魚の場合はどうでしょうか?
空中では生きられないので死んでしまいますよね。
つまり、金魚の例えば「弱者切り捨ての論理」を表しています。「弱者切り捨ての論理」とは社会的に弱い立場にある人にひどい仕打ちをすることを言います。

このように、タルムードの短いお話の中にはユダヤ人の哲学が含まれていて、議論することで子供の思考力を上げるためのトレーニングにもなります。

社会の一員として考える練習

お子様の年齢が高ければ、もっと踏み込んで議論することもできます。

「歩みの遅いロバに合わせていては効率が悪くなる。ここはやっぱり、力のある牛にあわせるべきではないかな?」という反論をしてみてください。

ロバに合わせると効率や生産性が落ちるけど、反対に牛に合わせれば、牛がどんどん畑を耕してくれるから穀物もたくさん育てられる。その方がロバにとっても好都合ではないか、という反論です。
これは「強者の論理」と呼ばれる大企業優先の経済政策のことを例えています。
簡単に言えば、大企業が儲かれば社会全体の賃金が上がるはずだという理屈です。

ユダヤ人の場合、以下のような理論で「弱者保護」の考え方を主張します。

世の中には強者と弱者がいて、強いライオンも弱いネズミも同じ世界で暮らしている。もし世の中をライオンのように強い者に合わせてしまったがために、弱いネズミが全滅してしまったら、食物連鎖が崩れてライオンも生きながらえなくなる、という主張です。

弱者を切り捨てれば、強者も生きてはいけない。強者と弱者が共存できる社会を目指す事が、強者にとっても生きやすい社会になるというのが「弱者保護」の根底にある哲学です。
ユダヤ教では、強者と弱者がいた場合、必ず弱者に合わせるべきだという考え方があります。もし弱者を保護したために経済が停滞しても、弱者が生きていけない社会を望んでいるわけではないので、それならそれで構わない、というのがユダヤ教の考え方です。

「弱者保護」や「強者の論理」にはそれぞれの考え方があるので、どちらが正しいという事ではないと思います。
しかし社会の一員として、自分がどうあるべきなのかという事は誰でも考えるべきことです。

まずは自分の主張の根源となる価値観や哲学をしっかりと持つことが重要です。
その上で価値観や哲学をどのように論理立てて相手に説明するかはとても難しいことです。子供のうちから訓練して思考力を深めることは大人になってから必ず役立つスキルになります。

子供たちに必要な「社会的公正教育」

「社会的な弱者」ってどんな人達?

ここからは、年齢の高いお子様向けに、「社会的な弱者」とは一体どういう人達のことをいうのか、子供にもわかりやすく実感させる方法を紹介します。

社会福祉学や教育社会学を研究されている出口真紀子さん(上智大学教授)が学生に行っている「特権と抑圧」を実感できるアクティビティというものがあります。
「特権」は「強者」を表し、「抑圧」は「弱者」を表しています。

まず、スクール形式で机が並んでいる教室で、黒板の前に大きな段ボール箱を置きます。生徒に一枚ずつ紙を配って、その紙に名前を書いて丸めてボール状にしてもらいます。
そのボールを自分の席から投げて段ボール箱に入れてもらいます。
そうすると、前の席の生徒は簡単に入れることができますが、後ろの席の生徒は簡単には入れることができません。そのうち、後ろの席に座っている生徒は、こんなゲームは無意味だと言って投げること自体をやめる生徒が出てくるそうです。

ゲームの後、座席から黒板までの距離が何を意味すると思うか、生徒に聞きます。
ここでの「容易にボールを箱に入れられた、前方に座っている生徒」は、「経済的に恵まれた家庭環境の人」や「男性」、「異性愛者」などの社会的に「特権をもった人」で、後ろに行くほどそうではない境遇の人ということを表しています。

この説明をすると、直感的に「強者が持つ特権」や「弱者の抑圧」について理解できるそうです。これは、アメリカなどでは「Social Justice Education(社会的公正教育)」として研究され、学校でも行われています。

これは家庭でも実践できる簡単なゲームです。ゲームをした後、このゲームにもあるような不公平な構造を変えていくにはどうすればいいのか、子供と話し合うきっかけを作ることができます。

行動すべきは「特権を持つ強者」

このような不公平な構造を変えていくためには、特権を持つ側で気づいた人が行動する必要があります。教室の前方に座っている人(特権を持つ強者)は、前だけを見ていれば、自分が優遇されていることにすら気づきません。
また、後ろを振り返って、自分が特権的な立場にいることを自覚した人で、それでも何も行動をせずにこの特権にとどまれば、この構造の不公平さに加担したことと同じになります。

社会学者のピエール・ブルデュー氏の「排除された者の明晰(めいせき)さ」という言葉があります。
特権から排除された側には差別的構造がありありと見えるので、世界を明晰に理解することができる。一方で特権を持つ側はそれに気づかないふりをして生きていくことができるので、そのような明晰さを持ちえないというのが「排除された者の明晰さ」と言う言葉の意味です。
先ほどの教室のゲームでも、後ろに座っている生徒(抑圧された弱者)からは不公平さがよく見えています。

特に差別などの問題では、特権を持たない側よりも特権を持つ側が声を上げた方が、圧倒的に大きな効力があります。
例えば女性差別について女性が訴えるよりも、男性が訴えた方が何倍も効力があるということが現在の社会ではよくあることです。
ギバーが成功する秘密 ソーシャル・ビジネスが求められる理由
2030年までに児童婚をゼロに!女の子たちをエンパワーメントしよう
ビル・ゲイツも子供にしている「チャリティー」というお金の教育

特権を持つ人がこのような不平等な構造を自覚するには、たくさんの知識が必要になります。子供たちはこの知識を教育の中で学んでいく必要があります。

ユダヤ人の「牛とロバ」のお話や、「Social Justice Education(社会的公正教育)」の方法を使って、お子様と社会の在り方について話合うきっかけを作ってみてください。

ブログランキングに参加しているので、ポチっとお願いします。
にほんブログ村

人気ブログランキングへ

投稿者: Hiroko mama

カリフォルニアで夫と3人の息子と暮らしています。 早期リタイアのために米国株式投資で資産形成を始めました。 金融リテラシーを高めるために日々勉強中です。

子どもに社会の在り方をどう教える? ユダヤ人の「牛とロバ」のお話」に3件のコメントがあります

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。